病の啓発

なぜうつ病の人が増えたのか

なぜうつ病の人が増えたのか

製薬会社によるうつ病の啓発活動によって、軽症うつ病の患者が大幅に増え、それに伴い、抗うつ剤の売り上げも上がっていることを客観的に示した本。要旨は、後書きにあるように

  1. 先進国では、SSRI発売開始後、うつ病患者が急増するというグローバルな現象が起きている。
  2. うつ病の啓発活動が盛んになるにつれ、うつ病受診者やメンタル休職者が急増している。
  3. 軽症うつ病には抗うつ薬はそれほど効果がないし、自然に回復する患者も多い。軽症うつ病には、最初から抗うつ薬を使ってはいけないという方針の国もある。
  4. うつ病の治療には、安静が必要だが、同じくらいリハビリテーションも大切だ。
  5. 慢性うつ病の治療にとって必要なのは、自分は病気の影響下にあるという意識ではなく、むしろ自分は自分の行動や考え方を選択できるという感覚を取り戻すことである。

ということである。他に興味深い点として、

  • 軽症うつ病には、認知療法が効果がある
  • 日本のみ脳循環代謝改善薬が発売されており、 ’98から'99年に、当時の大蔵省の要請で、再試験が行われ、耕悲しとして承認を取り消された。それまでに一兆円以上の売り上げがあったらしい。薬の認可に対し、非常に保守的なイメージがある厚生省(厚労省)にしては、異例すぎると感じた。

それから、日本でSSRIが発売される'99年より前の'96年に軽症うつ病 (講談社現代新書)という本が出ており、読んだ覚えもあるのだが、この本は、先見の明があったのか、それとも啓発の先取りだったのかというのが気になる。