トルコ共和国の栄光

トルコ狂乱 オスマン帝国崩壊とアタテュルクの戦争

トルコ狂乱 オスマン帝国崩壊とアタテュルクの戦争

800ページを超える大著。希土戦争(1919-1922)のトルコ人による歴史小説歴史小説と言っても、かなりの部分は史実に沿っており、希土戦争について文献が少ないので、貴重な本である。なぜ、トルコが政教分離になったのか、そして、軍部が権力を握っているのかの原点がわかる。また、ギリシャよりもその背後にいる英国を帝国主義の権化として書いているのが興味深い。ただし、あくまでもトルコ人によるトルコ人のための歴史小説であるということは注意しなければならない。アルメニア人の虐殺にトルコ人は関与していないことになっているし、トルコ軍は、蛮行を働いていないということになっている。

政教分離の代わりに、トルコ共和国の存在意義を民族自決としてしまったため、アナトリア内の少数民族(クルド人等)が迫害されることになってしまったというのは、トルコのもう一つの顔 (中公新書)あたりを読むとよく分かる。